「愛犬の目、大丈夫ですか? ~老犬の視力低下に気づくために~」。【老犬ケア】

2026.10.17 (老犬ケア)

愛犬の目、大丈夫ですか? ~老犬の視力低下に気づくために~

老犬の目の病気年齢を重ねると、人間と同じように犬も目の機能が少しずつ低下していくことがあります。

老犬ケアに寄せられる老犬ホームご利用相談の愛犬にも、視力が低下した子が多くいます。
ただ、犬は人間ほど視覚だけに頼って生活しているわけではありません。

犬は嗅覚や聴覚も使いながら周囲の状況を把握しているため、視力が落ちても普段どおり生活できることがあります。
そのため、飼い主さんが愛犬の視力低下に気づくまで時間がかかるケースもあります。

今回は、老犬の視力が低下する原因や、その予兆、暮らしの中で気を付けたいポイントについてご紹介します。

■ 老犬の視力が低下する主な原因

高齢になると、目そのものの加齢変化によって見えにくくなることがありますが、病気が原因となっている場合もあります。
代表的なものの一つが白内障です。
目の水晶体が白く濁ることで、徐々に視力が低下していきます。

他にも、緑内障では眼圧が高くなることで視神経が障害され、視力低下や失明につながることがあります。進行すると強い痛みを伴うこともあるため、早めの診察が重要です。
また、網膜の働きが低下する進行性網膜萎縮症や、網膜剥離、眼底の病気などによって見えにくくなることもあります。

さらに、目の病気ではなくとも、糖尿病などの全身疾患が目の状態に影響するケースもあります。

見え方の変化に気づいた場合には、「高齢だから見えなくなった」と考えるよりも、一度動物病院で診てもらうことが大切です。

■ 視力が落ちても、犬は意外と普段通り生活できる

人間は生活の多くを視覚に頼っていますが、犬は嗅覚や聴覚なども使って周囲の状況を判断しています。そのため、視力が低下しても、慣れた自宅の中であれば問題なく歩けることがあります。

いつもの場所に水がある。
いつもの場所にベッドがある。
廊下をまっすぐ進めば玄関がある。

こうした環境を記憶し、においや音も手掛かりにしながら生活しているためです。

徐々に視力が低下した場合は特に、犬自身が少しずつ環境に適応してしまうことがあります。飼い主さんから見ると普段とあまり変わらないため、かなり視力が低下してから初めて気づくこともあります。

だからこそ、日頃から愛犬のちょっとした行動の変化を見ておくことが大切です

■ こんな変化があれば、視力低下のサインかも

視力低下は、日常のちょっとした行動の変化として現れることがあります。
以下のような変化が見られたら、視力低下のサインかもしれません。

・暗くなると歩きたがらなくなったり、夕方や夜の散歩を嫌がったりするようになった
・家具や壁にぶつかることが増えた
・段差の前で立ち止まったり、階段を怖がるようになった
・投げたおもちゃを見失いやすくなった
・食べ物を目の前に置いてもすぐに見つけられない
・飼い主さんが近づいても気づかず驚く
・散歩中に急に立ち止まることが増えたり、初めての場所で以前より不安そうにしたりする

ただし、こうした行動は耳の衰えや認知機能の低下、足腰の不調などでも起こることがあります。
気になる変化が続く場合は、視力だけの問題と自己判断せず、獣医師に相談しましょう。

■ 視力が低下した愛犬との暮らしで気を付けたいこと

視力が低下した老犬との暮らしでは、愛犬がこれまでの感覚で安心して生活できる環境をできるだけ維持することが大切です。

〇 日常的に使うものは同じ場所に置いておく
犬は慣れた部屋の配置を覚えながら生活しているため、家具の位置を頻繁に変えたり、これまで何もなかった場所に物を置いたりすると、ぶつかったり転倒したりする原因になります。
特に水飲み場や食事場所、ベッド、トイレなど、日常的に使うものはできるだけ同じ場所に置いておきましょう。

〇 万が一ぶつかってもケガをしにくい環境を整えておく
テーブルや棚の角にはクッション材を付け、家具と壁の間など入り込むと身動きが取りにくい場所はふさいでおくと安心です。
階段や玄関など転落する可能性がある場所には、ゲートを設置する方法もあります。

〇 愛犬への接し方にも注意
視力が低下すると、飼い主さんが近づいていることに気づかず、突然触られて驚いてしまうことがあります。近づく時には名前を呼んだり、やさしく声を掛けたりして、自分の存在を知らせてから触れるようにしましょう。
耳も遠くなっている老犬では、足音や床から伝わる振動なども、飼い主さんの存在に気づく手掛かりになることがあります。

〇 飼い主さんが愛犬の「目」になってあげる
散歩では、飼い主さんが愛犬の「目」の代わりになってあげることが大切です。
段差や縁石、側溝、自転車など、愛犬の進む先に危険がないか確認しながら歩き、必要に応じて声を掛けながらゆっくり誘導してあげましょう。

視力が低下したからといって、散歩や外出をやめる必要はありません。安全に配慮しながら外へ出ることで、においや音、風など、視覚以外の刺激を楽しむことができます。

「見えなくなったから行動を制限する」のではなく、「見えにくくても安心して行動できる環境をつくる」ことを意識してあげましょう。

■ 見えなくなっても「できること」はたくさんある

愛犬の視力が低下すると、飼い主さんは大きな不安を感じるかもしれません。

「このまま生活できるのだろうか」
「かわいそうなのではないか」
そう感じる方もいるでしょう。

しかし犬は、人間よりも嗅覚や聴覚を活用して生活しています。環境を大きく変えず、安全な動線をつくり、飼い主さんが少しサポートしてあげることで、視力が低下しても穏やかに暮らせる犬は少なくありません。

また、見えにくくなったからといって、それまで楽しんでいたことをすべてやめる必要もありません。
いつもの散歩道をゆっくり歩く、好きな場所のにおいを嗅ぐ、飼い主さんと触れ合うなど、視覚以外の感覚を使って楽しめることはたくさんあります。

大切なのは、「見えなくなったから何もできない」と考えることではなく、その子が今使える感覚を活かしながら暮らしやすい環境を整えてあげることです。

■ 視力の変化に気づいたら、まず動物病院へ

高齢になると視力が低下することはあります。しかし、その原因が単なる加齢とは限りません。
白内障や緑内障など、治療や適切な管理が必要となる病気もあります。

目が白くなった、赤みがある、涙や目やにが増えた、片目を閉じている、目を気にしてこする、急に物にぶつかるようになったといった変化が見られた場合には、早めに獣医師の診察を受けましょう。

特に急性緑内障、角膜潰瘍、ぶどう膜炎などの目の疾患は速やかに治療する必要があるので、急激に視力が低下したように見える場合や、目の痛みが疑われる場合(目をしょぼつかせる、しきりに目を気にしてこする)、目の表面が急に濁ったように見える場合は、できるだけ早く受診してください。

■ 愛犬が安心して過ごせる環境を

老犬の視力低下は、年齢を重ねた愛犬との暮らしの中で起こる可能性のある変化の一つです。
そして、見えにくくなったからといって、愛犬の生活の楽しみがすべて失われるわけではありません。

慣れた部屋を歩く。
飼い主さんの声を聞く。
好きなにおいを嗅ぐ。
いつもの場所で眠る。

犬は視覚以外にもさまざまな感覚を使いながら生活しています。

まずは愛犬の小さな変化に気づき、その原因を確認すること。
そして視力が低下しているのであれば、部屋の配置を変えない、危険な場所を減らす、急に触らないなど、少しずつ生活環境を整えてあげましょう。

見え方が変わっても、安心できる場所と信頼できる飼い主さんがそばにいることは変わりません。
愛犬がこれまでと同じように穏やかな毎日を送れるよう、その子の変化に合わせて暮らし方も少しずつ変えていってあげてください。

《獣医師からのアドバイス》
だんだんと目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなったりする愛犬の姿に、老いを感じ、寂しさを覚えることがあるかもしれません。
それでも愛犬は、そのときどきの環境の中で、懸命に生きています。
視力や聴力が低下しても、愛犬ができる限り快適に、安心して過ごせるよう、環境や接し方を工夫しながら、一緒に暮らしていけるとよいですね。

(医療監修:獣医師 先崎直子)

 

視力が低下した愛犬との暮らしでは、その子の状態に合わせて生活環境やお世話の方法を工夫することも大切です。
► 老犬のお世話・介護のノウハウはこちら

また、歩行や生活環境をサポートする介護用品を取り入れることで、愛犬がより安全に過ごせることもあります。
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