2026.05.28 (老犬ケア)
施設訪問記 老犬ホームnorn(ノルン)
老犬の介護に向き合っていると、
「このままでいいのだろうか」
「もっとできることがあるのではないか」
そんな思いに悩まされることはありませんか。
今回訪問したのは、2026年5月に開業予定(取材時)の老犬ホームnorn(ノルン)さん。
開業前の準備期間にお話を伺い、その想いや背景に触れてきました。
そこには、単なる施設ではなく、「飼い主と愛犬の両方を支えたい」という強い思いがありました。
■きっかけは、ひとつの介護体験から
norn(ノルン)を立ち上げた伊勢田さんは、もともと動物業界とは無縁の仕事をされていました。
転機となったのは、コロナ禍のある出来事。
保護した高齢の猫の介護が始まったことでした。
当初は時間に余裕があり、しっかり向き合うことができていたものの、仕事が再開すると状況は一変します。
夜中の介護、仕事との両立、そして続く心配。
「このままでは難しい」と感じながらも、頼れる場所はほとんどありませんでした。
高齢や持病があるだけで預かりを断られる現実。
そのときに感じたのが、「同じように困っている人はきっと多い」という思いだったそうです。
「それなら、自分でつくろうと思いました」
その言葉の裏には、実体験からくる切実さがありました。
■ 実務経験のために「無給でもいい」と飛び込んだ情熱
「自分と同じように介護で悩む人を助けたい」と決意した伊勢田さんでしたが、当時は動物業界での経験はゼロ 。
専門学校も出ておらず、年齢を理由に断られる日々が続きました 。
それでも諦めきれず、「給料はいらない、ボランティアでもいいから実務経験を積ませてほしい」と必死に願い出たところ、その熱意に心を打たれたある店舗の店長が、契約社員として採用してくれたのです 。
そこで3年間、子犬から看取りまで、多くのワンちゃんと向き合い、介護のノウハウと経営を学びました 。
■おばあさまから受け継いだ、縁深いこの場所で
開業の場所となったのは、兵庫県姫路市にある伊勢田さんの祖母の家でした 。
元々は大阪での開業も考えていましたが、たまたま空き家となったこの家を親族が「誰かに住んで守ってほしい」と願っていたタイミングと重なったのです 。
一時は庭も木が生い茂り、空き家として傷み始めていた家が、老犬ホームとして再び息を吹き返しました 。
「おばあちゃんも『戻っておいで』と呼んでくれたのかもしれないですね」 そんな不思議な縁に導かれ、地域の人々にも温かく見守られながら、norn(ノルン)は産声を上げることとなりました。

■「預ける罪悪感」を少しでも軽くしたい
施設づくりで特に意識したのは、「預ける側の気持ち」でした。
老犬ホームというと、「最後まで面倒を見られないから預ける」というイメージを持つ方も少なくありません。
実際、飼い主の中には罪悪感を抱く方も多いといいます。
だからこそnorn(ノルン)では、「ただ預ける場所」ではなく、少しでも前向きな気持ちで利用できる空間づくりを意識されています。
室内は、いわゆる“施設らしさ”を感じさせない、落ち着いた空間。
どこか温かみがあり、愛犬を「預ける」というより、「過ごしてもらう」場所という印象を受けました。
「旅行に来ているような感覚で預けてもらえたら」
そんな言葉が印象的でした。
■「預けっぱなしにしない」ための工夫
もうひとつ印象的だったのは、「飼い主さんにはできるだけ会いに来てほしい」という考え方です。
norn(ノルン)では、月ごとの更新制を取り入れています。
それは単なる契約上の仕組みではなく、定期的に愛犬のことを思い出し、関わるきっかけにしてほしいという想いから。
実際に、以前勤務していた施設では、飼い主さんが会いに来るだけで元気になる犬の姿を何度も見てきたそうです。
食欲が戻る
歩けなかった子が歩き出す
そうした変化を目の当たりにしてきたからこそ、「会うことの大切さ」を強く感じていると話されていました。
■介護は「完璧にやろう」としないこと
取材の最後に印象的だったのは、伊勢田さんのこの言葉です。
「介護って、やり始めるとどんどん完璧を目指してしまうんです」
もっとできるはず
これでいいのか
そうして気づいたときには、体力も精神的にも限界に近づいていることも少なくありません。
「でも、飼い主さんが潰れてしまったら、それで終わりなんです」
だからこそ、「思い切って頼ってほしい」と話されていました。
■ すべてを抱え込まなくていいという選択
老犬の介護に、正解はありません。
どれだけ向き合っても、後悔がゼロになることはないかもしれません。
それでも、少しでも無理なく続けていくことはできます。
そのための選択肢のひとつが、老犬ホームの存在です。
今回訪問したnornは、「預ける場所」であると同時に、「飼い主が安心して頼れる場所」でもありました。
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