施設訪問記 ドッグ・ビレッジ
2020.04.03
千葉県八千代市の老犬ホーム「ドッグ・ビレッジ」を訪問し、オーナーの工藤さんにお話を伺ってきました。
施設を開設する前は、建設業界で公共事業に携わっていたという工藤さん。ふと、ご自身のこれからを考えた時に頭に浮かんだのは、4年前から飼い始めた愛犬ランちゃんのことでした。
「もし愛犬が高齢になり、介護が必要になったら、共働きの家で面倒が見られるのか」
「核家族が多い今の環境で頼れる人がいるのか」
「自分の他にも、同じような悩みを抱えている人がいるのではないだろうか」
年齢的にも新しいことを始めるならば今しかない、と思い切って会社を辞め、ご自身での老犬ホームの開設を決意しました。
「自宅で開業した理由は、単に近くで良い物件が見つからなかったというのもあるんですが、ご近所は犬を飼っている家が多く、施設にも理解してくれる方ばかりで良かったなと思います。」
5年前に建てたばかりの自宅の1階をDIYで改装し、ワンちゃんたちに常に目が届くようにしました。24時間、夜間も何かあればすぐに対応できるのは自宅で開業した利点とのこと。お預かりするワンちゃんたちも家族の一員としてアットホームな雰囲気の中で過ごしてもらいたいといいます。
現在はスペースの問題もあり、1日に最大6頭までのお預かりに限定していますが、老後は学生時代を過ごした鹿児島で古民家を改装して、広々とした場所での施設開業ができたらと将来の夢を語ってくれました。
今のご自宅は東京のベッドタウンということもあり、共働きの核家族が多く暮らしている地域。常に家で愛犬のお世話ができる家庭とは違って、仕事をしながらの介護は精神的にも体力的にもかなりの負担となります。
「高齢になって手に負えなくなったからとお世話を放棄してしまったり、こんなはずじゃなかったと思うこともあるかもしれませんが、犬にとってはそんな人間の都合なんて関係ないんですよね。そういう部分のすれ違いをなんとか救っていきたいんです。」と語る工藤さん。
ご実家で暮らしていた頃に看取ってきた愛犬や、お付き合いのあるトリミングサロンでお世話している保護犬との触れ合いの中で、現代のライフスタイルにおける老犬介護の難しさを感じられたそうです。
工藤さんが老犬ホーム開設に向けて大きく影響を受けたのは、老人ホームに入居した飼い主と、老犬ホームに預けられた犬を取材したテレビ番組から。「実際に利用しなくても、そういう場所があると知っているだけでも気が楽になる」というのを実感されたとのこと。
「愛犬を介護している人は、みなさんどこか切羽詰まっているところが少なからずある。困った時に一度肩の荷を降ろして気持ちを楽にできる場所が必要なのでは。」と語る穏やかな口調には工藤さんの優しい人柄がにじみ出ているようでした。
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