「利用者の声|「預けること」は、手放すことではない~老犬ホームという選択~」。【老犬ケア】

2026.06.12 (老犬ケア)

利用者の声|「預けること」は、手放すことではない~老犬ホームという選択~

愛犬の柴犬老犬ホームへの預け入れを考える時、多くの飼い主さんが最初に感じるのは、迷いや後ろめたさかもしれません。

「本当に預けていいのだろうか」
「最後まで自分で見なければいけないのではないか」

今回お話を伺ったKさんも、同じような思いを抱えていました。

愛犬は、柴犬の男の子。

Kさんのお子さんが小学生の頃、近所にいた柴犬をとても気に入り、その家の前を自転車で通っては、そっと見て帰ってくることがあったそうです。
そんな姿を見て、「兄弟のような存在がいたらいいな」と迎えたのが、まだ生後3ヶ月ほどだった愛犬でした。

子どもと母、愛犬の柴犬。
迎え入れた柴犬は、家族の一員として暮らし始めました。

柴犬の男の子らしく、少し頑固で、思い通りにならないこともありましたが、人に慣れないどころか、とても社交的な子だったといいます。

外で飼っていたこともあり、近所の方にも可愛がられていました。

番犬のつもりで迎えたはずが、あまり番犬にはならず、周囲からは「張り子番犬」と呼ばれるほどだったそうです。

子どもの友達が家に来ると、自分も輪の中に入りたがる。
高校生になったお子さんの友人たちと一緒に散歩へ行くと、まるで自分が案内役であるかのように、得意げに先頭を歩く。
そんな愛犬は、家族のそばで、子どもの成長を一緒に見守ってきた存在でした。


介護と仕事、そして自分の体調


やがてお子さんは就職で家を離れ、Kさんと愛犬の暮らしになりました。

その頃、愛犬は14歳。
夜になると強く鳴くことがあり、トイレの失敗も増えてきました。
外でしか排泄しないため、朝早くても、夜遅くても、散歩に出る必要がありました。
Kさんは朝5時半前に散歩へ行き、6時過ぎには仕事へ出る生活、帰宅は夜8時半、9時頃になることもありました。
家に帰ると、まず愛犬の世話をする。
ご飯をあげ、散歩へ行き、夜遅くにまた外へ出たがれば連れて行く。

仕事の責任も重くなる中で、Kさんはできる限りのことを続けていました。
けれど、睡眠が削られ、体力も少しずつ限界に近づいていきます。
それでもすぐに「預けよう」と思えたわけではありません。

「もう少し頑張れるのではないか」
「自分が我慢すればいいのではないか」
「この子を置いていくようなことになるのではないか」

そう考えながら、日々のお世話を続けていました。

そんな中、Kさん自身の持病が悪化し、手術と入院が必要になりました。
以前、交通事故で動けなくなった時にも、愛犬の預け先を考えたことがあったそうです。
その時はご実家の弟さん家族が見てくれました。

けれど今回は、愛犬も高齢になっていました。

夜鳴きや排泄の失敗もあり、長期間のお世話を家族に頼むことは簡単ではありません。

「また家族に頼っていいのだろうか」
「このまま自分だけで続けられるのだろうか」
「でも、本当に預けてしまっていいのだろうか」

答えの出ない問いを抱えながら、Kさんは以前調べた老犬ホームの存在を思い出します。

愛犬の柴犬
近さよりも、安心できる場所を

施設を調べていく中で、Kさんが重視したのは、近くにあることではありませんでした。

大切だったのは、愛犬をきちんと見てくれること、高齢犬の体調を理解し、安心して任せられることでした。

その点で大きかったのが、お預け先として検討していた施設が動物病院の運営で、オーナーが獣医師だったことでした。

体調の変化があった時、どういう状態なのか
これからどうなっていくのか
必要な対応は何か

そうしたことを、きちんと説明してもらえる安心感があったといいます。

実際に訪ねてみると、獣医師でもあるオーナーはできること、できないことを率直に話してくれました。

広々とした環境
犬ごとのスペース
のびのび過ごせるドッグラン

そう思えた一方で、決断は簡単ではありませんでした。
施設の環境が良いと感じても、それで迷いがなくなるわけではありません。

「預ける」という言葉の重さ
家族として一緒に暮らしてきた時間
自分の手で最後まで見られないかもしれないという申し訳なさ

Kさんは、そのすべてを抱えたまま、愛犬にとって何が一番穏やかな時間につながるのかを考え続けました。

そして悩んだ末に、老犬ホームへの預け入れを決めました。


それでも、最初の2ヶ月はつらかった

預け入れたからといって、すぐに気持ちが軽くなるわけではありません。

Kさんは、最初の2ヶ月ほど、とてもつらかったそうです。

「自分は動物を飼う資格がないのではないか」
「サジを投げてしまったのではないか」

そんな思いが消えなかったといいます。
もう一度、引き取ろうかと考えたこともありました。

それほどまでに、預けるという選択は大きなものでした。

けれど面会に行くと、愛犬は元気に過ごしていました。
家にいた頃よりも、しっかり動いているように見えたそうです。

さらに夏が近づいた時、Kさんはふと、こう思ったそうです。

もし自宅にいたら、仕事から帰るまでの暑さに耐えられただろうか
高齢になった愛犬にとって、この夏は厳しかったかもしれない

その時はじめて、「預けてよかったのかもしれない」と思えたそうです。

愛犬の柴犬

「選択肢がある」と知ってほしい

同じように悩む飼い主さんへ、Kさんはこう話してくださいました。

「犬も飼い主も、無理をし続けることが本当にいいのか、考えてもいいと思います」

一生懸命お世話をすることは、愛情です。
けれど生活のすべてが介護になり、飼い主も犬も追い詰められてしまうことがあります。

老犬ホームを選ぶことは、飼い主として失格になることではありません。
愛犬が穏やかに過ごせる場所を探すことも、最後まで責任を持つことのひとつです。

「ここまできちんと見てくれるとは思っていませんでした」

Kさんの言葉には、実際に迷い、預け、何度も会いに行きながら気持ちを整理してきた時間がにじんでいました。

今も愛犬は老犬ホームで穏やかに年を重ねています。

家族のそばで育ち、子どもの兄弟のように過ごしてきた愛犬。
その大切な時間があったからこそ、Kさんは悩みました。
そして悩んだからこそ、愛犬にとってより良い場所を選ぼうとしました。

老犬介護に悩んだ時、ひとりで抱え込まなくてもいい。
その子のために、そして飼い主さん自身のために。

老犬ホームという選択肢を知っておくことが、少しでも心を軽くするきっかけになるかもしれません。

 



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