「防災の日|愛犬・愛猫のために備えておきたいこと ~避難所・社会性・備蓄を見直す~」。【老犬ケア】

2026.08.23 (老犬ケア)

防災の日|愛犬・愛猫のために備えておきたいこと ~避難所・社会性・備蓄を見直す~

9月1日は「防災の日」です。

地震や豪雨、台風などの災害は、いつ、どこで起こるか分かりません。
近年は大きな災害だけでなく、各地で地震や大雨への警戒が必要な状況が続いています。

2026年3月には青森県東方沖を震源とする地震、4月と6月には茨城県南部を震源とする地震、6月には山梨県東部・富士五湖を震源とする地震が発生しました。
また、2026年6月は台風や梅雨前線の影響で降水量が多く、東京都心では6月として60年ぶりの大雨となりました。さらに7月には熊本県で大きな地震が発生し、8月には千葉豪雨によって多くの方が被災されました。

こうした出来事を見ると、災害への備えは特別な地域だけのものではなく、どの家庭にとっても身近な課題だと感じます。
そして、犬や猫と暮らしているご家庭では、人の防災だけでなく、愛犬・愛猫の防災も考えておく必要があります。
特に老犬や老猫の場合、若いころに比べて環境の変化に弱くなり、持病や服薬、食事、排泄、移動にも配慮が必要になります。いざという時に慌てないために、防災の日をきっかけに、愛犬・愛猫の備えについて見直してみましょう。

■ 災害時の基本は「飼い主による備え」

災害時には、まず人命が最優先になります。そのため、避難所や行政による支援も、最初は人への対応が中心になります。
もちろん、近年はペットとの同行避難やペット支援の必要性も広く認識されるようになってきましたが、災害直後から犬や猫のフード、水、トイレ用品まで十分に支援されるとは限りません。

環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」でも、災害時のペット対策は、飼い主が自らの責任でペットを適切に飼養し続けることが基本とされています。
つまり、愛犬・愛猫を守るためには、日頃からの備えが何より大切です。

避難所の場所を調べておくこと、持ち出し用品を準備しておくこと、普段からケージやクレートに慣らしておくこと、そして必要に応じて預け先を確保しておくこと。
こうした準備は、災害時に愛犬・愛猫を守るだけでなく、飼い主さん自身の安心にもつながります。

■ 「同行避難」は同じ部屋で過ごせるという意味ではない

災害時のペット避難でよく使われる言葉に「同行避難」があります。これは、災害が起きた時に飼い主がペットと一緒に安全な場所まで避難することを意味します。

ただし、ここで注意したいのは、同行避難は「避難所の中で、飼い主とペットが同じ部屋で過ごせる」という意味ではないという点です。
避難所には、動物が苦手な方、アレルギーのある方、小さな子ども、高齢者、体調の悪い方など、さまざまな人が集まるため、ペットを受け入れている避難所でも、人の生活スペースと動物の飼養スペースが分けられることが一般的です。
犬や猫は、体育館の外、校舎の一角、屋根のある屋外スペース、専用の部屋など、避難所ごとに決められた場所で過ごすことになります。

また、ペットの受け入れ可否や飼養場所、必要な持ち物、ケージの有無、ルールは自治体や避難所によって異なります。
「ペット可」と書かれていても、飼い主と一緒に寝られるとは限りません。
「同行避難可」とされていても、大型犬や吠えやすい犬、ケージに入れない犬では対応が難しい場合もあります。

猫の場合も、必ずキャリーバッグやケージでの管理が求められると考えておいた方がよいでしょう。
日頃からお住まいの自治体のホームページや防災マップで、近くの避難所がペット同行避難に対応しているか、どのようなルールになっているかを事前に確認しておくことが大切です。

■ 避難所生活に備えた社会性

避難所では、家とはまったく違う環境になります。

・知らない人が大勢いる
・他の犬や猫が近くにいる
・大きな音がする
・飼い主と離れた場所で過ごす時間がある
・ケージやクレートの中で長時間待つこともある

こうした環境は、犬や猫にとって大きなストレスになります。

特に老犬の場合、目や耳の衰え、認知機能の低下、足腰の不安などによって、若いころよりも環境の変化に敏感になっていることがあります。
自宅では穏やかに過ごせていても、避難所では不安から鳴き続けたり、落ち着かなくなったり、食事や排泄がうまくできなくなったりすることもあります。
災害に備えるうえでは、フードや水を用意するだけでなく、日頃から社会性を育てておくことも大切です。

社会性といっても、特別な訓練をするという意味ではありません。まずは、ケージやクレートに慣れることから始めましょう。
普段から部屋の中にクレートを置き、扉を開けたまま自由に出入りできるようにしておきます。中に好きな毛布やおやつを入れ、「閉じ込められる場所」ではなく「安心して休める場所」として覚えてもらうことが大切です。
最初は数分だけ扉を閉め、落ち着いていられたら褒める。少しずつ時間を伸ばしていくことで、災害時にもクレート内で過ごしやすくなります。

次に、人に慣れる機会を増やします。
避難所では、飼い主以外の人が近くを通ったり、場合によってはスタッフや獣医師、ボランティアがケアに関わったりすることがあります。知らない人が近づくだけで強く吠える、触られると噛もうとする、といった状態では、避難所での生活が難しくなることがあります。

・普段の散歩中に、無理のない距離で人の多い場所に慣らす
・家族以外の人からおやつをもらう練習をする
・動物病院やトリミング、ペットホテルなどを短時間利用してみる

こうした経験は、災害時だけでなく、通院や入院、老犬ホームや一時預かりを利用する時にも役立ちます。

さらに、他の犬や猫の存在に慣れることも重要です。
避難所では、他の動物と同じ空間、あるいは近い場所で過ごすことがあります。
直接触れ合う必要はありませんが、近くに他の犬がいても過度に興奮しない、吠え続けない、飼い主の声に反応できる、といった状態を目指しておくと安心です。

もちろん、すべての犬が社交的になる必要はありません。
怖がりな子、持病がある子、認知症の症状がある老犬では、無理に人や犬に慣らそうとすることでかえって負担になることもあります。その場合は、無理をさせるのではなく、「うちの子はこういう環境が苦手」と把握しておくことが備えになります。
そのうえで、避難所だけでなく、親族の家、知人宅、老犬ホーム、ペットホテル、動物病院など、別の避難・預け先を検討しておくことが大切です。

■ 猫の場合は「隠れる」「逃げる」を前提に備える

猫は環境の変化に敏感な動物です。
避難所や見知らぬ場所では、犬以上に強いストレスを感じることがあります。また、驚いた拍子にキャリーから逃げ出してしまうと、見つけることが非常に難しくなります。
そのため、猫の場合は、まずキャリーバッグに慣らしておくことが大切です。

・普段からキャリーを収納せず、部屋の中に置いておく
・中に毛布を入れて寝床のひとつにする
・時々おやつを入れて、自分から入る経験をつくる

このように、キャリーを「病院へ連れて行かれる時だけのもの」にしないことが大切です。

また、災害時にはキャリーの扉が開かないよう、ガムテープなどで補強できる準備も必要です。
猫は体が柔らかく、少しの隙間からでも逃げ出すことがあります。避難時には、首輪や迷子札をつける、マイクロチップ情報を確認しておくなど、逸走対策も忘れないようにしましょう。

■ 備蓄は「最低5日、できれば7日以上」を目安に

災害時、人の食料や水については、避難所や行政から支援が行われることがあります。しかし、犬や猫のフード、水、トイレ用品、薬まで十分に届くとは限りません。
内閣府の物資支援でも、発災当初は正確な情報把握に時間がかかり、民間供給能力も低下することから、被災自治体だけで必要な物資を迅速に調達することは難しいとされています。

また、国のプッシュ型支援の基本品目は、食料、毛布、簡易トイレ、乳児用ミルク、おむつ、生理用品など、人の生活に必要なものが中心です。給水支援についても、基本的には人間の飲料水や生活用水を対象としたものです。
その場に犬や猫に理解のある方ばかりとは限りません。災害時に限られた水を受け取る場面で、「これは犬の分です」と説明しても、周囲の方が理解してくれるとは限りません。だからこそ、愛犬・愛猫の水やフードは、飼い主さん自身が備えておく必要があります。

また、東日本大震災では、青森県が発災から約2週間後にペットフードの支援を要請し、実際に支援物資が届いたのは発災から約3週間後でした。
このように、大規模災害では物流が徐々に回復しても、ペットフードが十分に行き渡るまでには時間を要することがあります。
アレルギー対応食や療法食を食べている犬猫、食べムラがあり特定のフードしか食べない犬猫については、3週間から1か月程度を目安に備蓄しておくと安心です。
普段のフードで問題なく食べられる犬猫でも、少なくとも7日分程度は確保しておくことをおすすめします。

備えておきたいものとしては、フード、水、療法食、薬、ペットシーツ、おむつ、うんち袋、猫砂、ウェットティッシュ、タオル、食器、首輪、リード、ハーネス、キャリー、クレート、毛布、持病や服薬内容をまとめたメモなどがあります。

また、老犬の場合は移動用のカート、介護用ハーネス、滑り止めマット、床ずれ防止マットなどが必要になることもあります。老猫では、低いトイレ、普段使っている猫砂、落ち着ける毛布や布類も重要です。

■ ローリングストックで無理なく備える

備蓄と聞くと、特別な防災用品を大量に買いそろえるイメージがあるかもしれません。
しかし、フードやペットシーツ、水などは、日常的に使うものを少し多めに持っておき、使った分を買い足していく方法が現実的です。この方法を「ローリングストック」といいます。

たとえば、いつもフードを1袋だけ買っている場合は、常に2袋ある状態にしておきます。
古い方から使い、1袋使い始めたら新しいものを買い足す。ペットシーツや猫砂も同じように、完全になくなってから買うのではなく、一定量を残した状態で補充していきます。
こうすることで、賞味期限切れを防ぎながら、常に一定量の備蓄を維持できます。

災害は、フードを買いに行こうと思っていた日に起こるかもしれません。
日頃から少し多めに在庫を持ち、それを使いながら入れ替えていくことが、無理なく続けられる防災になります。

■ 避難所以外の選択肢も考えておく

災害時の避難先は、避難所だけではありません。
自宅が安全であれば在宅避難を選ぶこともあります。親族や知人の家に身を寄せることもあるでしょう。車中泊を選ぶ方もいますが、夏場の熱中症や冬場の寒さ、エコノミークラス症候群には十分な注意が必要です。

そして、愛犬・愛猫の状態によっては、ペットホテル、動物病院、老犬ホーム、老猫ホームなどに一時的に預けることも選択肢になります。
環境省のガイドラインでも、避難所での飼養が困難な場合や、飼い主の事情で飼養できない場合には、親戚や友人、自治体の収容施設、動物病院、民間団体などへの一時預けが選択肢として示されています。

平成28年熊本地震では、ペットとの同行避難が多く行われた一方で、避難所での受け入れや一時預かり、広域支援のあり方などに多くの課題がありました。
また、熊本市では、入院などで避難所での飼養が難しくなった飼い主への緊急対応として、協力機関での一時預かりも実施されています。
令和8年熊本地震においては、ペットの受け入れ可能な避難場所に関する情報が、速やかに提供されています。

老犬や老猫の場合、避難所での生活が難しいこともあります。

・夜鳴きがある
・認知症で徘徊する
・持病がある
・服薬や食事管理が必要
・排泄介助が必要
・他の犬猫が苦手

こうした場合、避難所に連れて行くことが必ずしも最善とは限りません。

もちろん災害時にはすぐに希望通りの預け先が見つかるとは限りませんが、平常時から近隣の老犬ホームや老猫ホーム、介護対応のペットホテル、動物病院などを調べておくことで、いざという時の選択肢が広がります。
可能であれば、事前に見学しておく、短時間の一時預かりを利用してみる、持病や介護状態でも受け入れ可能か確認しておくと安心です。

■ 持病・服薬情報は紙でも残しておく

災害時には、スマートフォンが使えなくなることもあります。
充電が切れる、通信が不安定になる、端末を持ち出せないなどの場合に備え、愛犬・愛猫の情報は紙でもまとめておきましょう。
名前、年齢、犬種・猫種、性別、避妊去勢の有無、マイクロチップ番号、持病、服薬内容、アレルギー、食事内容、かかりつけ動物病院、飼い主の連絡先、緊急連絡先などを一枚にまとめておくと、避難所や預け先で説明しやすくなります。

特に老犬・老猫では、普段の状態を知らない人が見ると、異常なのか普段通りなのか判断しにくいことがあります。

・後ろ足が弱い
・目が見えにくい
・耳が遠い
・夜に鳴くことがある
・この薬は朝晩飲ませる
・このフード以外は下痢をしやすい

こうした情報を残しておくことは、災害時の大切なケアになります。

■ 迷子対策も忘れずに

災害時には、驚いて逃げ出す、避難の途中ではぐれる、キャリーの扉が開いてしまうといったことも起こり得ます。
犬の場合は、首輪やハーネスが緩んでいないかを確認し、鑑札や狂犬病予防注射済票、迷子札を付けておきましょう。
猫の場合も、外れやすい安全首輪を使う場合は、迷子札やマイクロチップ登録情報の確認が大切です。
マイクロチップは装着しているだけでは十分ではありません。登録情報が古い住所や電話番号のままになっていないか、定期的に確認しておきましょう。

災害時には人も動物も混乱します。
「うちの子は逃げない」と思っていても、地震の揺れ、大きな音、知らない場所、人の多さによって、普段とは違う行動をすることがあります。

迷子対策は、愛犬・愛猫を守るための基本的な備えです。

■ 老犬・老猫だからこそ早めの準備を

老犬・老猫は、若い犬猫に比べて災害時の負担が大きくなり、以下のようなことが起こりやすくなります。

・環境が変わるだけで食欲が落ちる
・慣れない場所では眠れない
・トイレの失敗が増える
・足腰が弱く、長距離を歩けない
・暑さや寒さの影響を受けやすい
・持病が悪化する

「まだ大丈夫」と思えるうちに、家でできる簡単なことから備えておきましょう。

・クレートに慣らす
・カートに乗る練習をする
・薬や療法食を少し多めに確保する
・預け先を調べておく
・家族で避難方法を話し合っておく

こうした準備は、災害が起きてからでは間に合いません。
防災は、特別なことを一度にすべて行うものではなく、今日できることを一つずつ増やしていくことが大切です。

■ まとめ

9月1日の防災の日は、人の備えだけでなく、愛犬・愛猫の備えを見直す良い機会です。

災害時には、行政や避難所の支援も大切ですが、犬や猫を守る基本は飼い主さん自身の備えです。

同行避難は、同じ部屋で一緒に過ごせることを意味するわけではありません。避難所ごとにルールが異なり、犬や猫は専用スペースで過ごすこともあります。
ペット用のフードや水、トイレ用品はすぐに届くとは限りません。
老犬・老猫では、療法食や薬、介護用品が必要になることもあります。

・日頃から社会性を育てる
・備蓄をローリングストックしておく
・避難所以外の預け先も考えておく

まずはこの3つを心がけておくようにしましょう。

災害は避けられなくても、備えることはできます。
愛犬・愛猫と一緒に安心して暮らし続けるために、今日からできる備えを少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。

《獣医師からのアドバイス》
令和8年熊本地震、また、同じく令和8年千葉豪雨で被災された動物たちとそのご家族の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
猛暑の中、空調や水を十分に確保できない厳しい環境で過ごされている方も多いことと存じます。どうか体調を崩されることなく、一日も早く安心して過ごせる日常が戻りますよう、心よりお祈り申し上げます。
私たちにできることは限られていますが、一人ひとりができる支援が必要な方々へ届き、少しでも力となることを願っています。

(医療監修:獣医師 先崎直子

 

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