2026.08.06 (老犬ケア)
犬の嗅覚はどれくらいすごい? ~老犬になっても気を付けたい「鼻」の健康~
8月7日は「鼻の日」です。
私たち人間にとって鼻は、においを感じるための器官ですが、犬にとってはそれ以上に大切な役割を担っています。
散歩中に夢中になって地面のにおいを嗅いだり、家族が帰宅する前から玄関で待っていたりする姿を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
犬は「嗅覚で世界を感じている動物」とも言われています。
今回は、犬の優れた嗅覚の秘密や、加齢による変化、老犬との暮らしで気を付けたいポイントについてご紹介します。
■ 犬の嗅覚は人間の何万倍も優れている
犬の嗅覚は、人間の数千~数万倍優れているといわれています。その理由は、鼻の構造そのものにあります。
人間の嗅覚受容体は約500万個とされていますが、犬ではその数は約2億~3億個以上。さらに、においを処理する脳の領域も人間よりはるかに発達しているため、ごくわずかなにおいの違いまで感じ取ることができます。
私たちには「何となくいいにおい」「何となく嫌なにおい」としか感じられないものでも、犬は「誰が、いつ、どこを通ったのか」といった情報まで読み取っています。
散歩中に長い時間地面のにおいを嗅いでいるのは、単なる癖ではありません。犬にとっては、新聞を読むように周囲の情報を集める大切な時間なのです。
■ 犬にとって嗅覚は「見る」ことと同じくらい大切
犬は五感の中でも、とりわけ嗅覚への依存度が高い動物です。
人間は視覚から得る情報に頼って生活していますが、犬はにおいから周囲の状況を把握しています。
食べ物を探したり、仲間を見つけたり、縄張りを確認したり、安心できる場所かどうかを判断したりと、犬は日常生活のさまざまな場面で嗅覚を活用しています。
そのため、目や耳の機能が衰えた老犬でも、鼻がしっかり働いていれば普段どおり生活できることも少なくありません。
反対に、嗅覚が衰えると食欲や行動にも影響が出ることがあります。
■ 実は苦手なにおいもある
嗅覚が非常に優れている犬ですが、どんなにおいでも同じように判別できるわけではありません。
特に香水や芳香剤、柔軟剤、アロマオイルなど、人間にとっては心地よく感じる強い人工的な香りは、犬にとって刺激が強すぎることがあります。
また、多くのにおいが混ざった環境では、一つひとつのにおいを判別しにくくなります。
最近では室内で芳香剤やアロマを使用する家庭も増えていますが、犬は人間よりはるかに敏感です。使い方や量を間違えると、有害になることもあります。
飼い主には快適な香りでも、愛犬にとっては落ち着かない環境になっている可能性があるため、注意が必要です。
■ 老犬になると嗅覚も少しずつ衰える
人間と同じように、犬も年齢を重ねるにつれて嗅覚が少しずつ低下することがあります。
・以前より食べ物への反応が鈍くなった。
・おやつを見つけるまで時間がかかるようになった。
・散歩中ににおいを嗅ぐ時間が短くなった。
こうした変化は、加齢による嗅覚の衰えのサインかもしれません。
また、犬はにおいによって食欲が刺激されるため、嗅覚が低下すると食欲が落ちてしまいがちです。
特に老犬では「最近食べる量が減った」と感じたとき、その背景に嗅覚の衰えが隠れている場合があります。
■ 嗅覚が衰えた老犬との暮らしで気を付けたいこと
嗅覚が衰えてきた老犬との暮らしでは、生活環境にも少し工夫が必要です。
食欲が落ちてきた場合には、フードを人肌程度に温めることで香りが立ち、食欲が刺激されることがあります。ウェットフードを取り入れたり、少量のお湯で香りを引き立てたりすることも一つの方法です。
また、室内では強い芳香剤やアロマの使用を控えることも大切です。犬が頼りにしているにおいを消してしまったり、刺激の強い香りで負担を与えないようにしましょう。
さらに、老犬にとっては「慣れたにおい」が安心感につながります。お気に入りのベッドや毛布を頻繁に新しいものへ替えたり、室内の香りを大きく変えたりすると、不安を感じることがあります。
旅行へ連れて行く時や、ペットホテルを利用する際には、普段使っている毛布やタオルなどを一緒に持参すると、慣れたにおいに包まれて落ち着いて過ごしやすくなります。
散歩では時間に余裕があるときは自由ににおいを嗅ぐ時間をつくってあげましょう。
老犬になっても「嗅ぐ」という行動は脳への刺激になり、生活の楽しみにもつながります。
お家の中で「畳んだタオルの隙間におやつを隠して探させる」といった簡単な宝探しゲーム(ノーズワーク)もおすすめです。体を激しく動かさずに脳をフル活用できるため、足腰の弱い老犬にとって最高のレクリエーションになります。
■ 嗅覚の異常が病気のサインになることも
「年を取ったから鼻が利かなくなった」と思っていても、鼻炎や鼻腔内腫瘍などの病気、あるいは認知症などが原因となることもあります。
「好きだったおやつに反応しない」「食べ物の場所が分からない」「以前ほどにおいを嗅がなくなった」といった変化が続く場合は、年齢だけが原因と考えず、動物病院で相談することをおすすめします。
■ まとめ
犬にとって鼻は、単ににおいを感じる器官ではありません。周囲の環境を知り、人や仲間を認識し、安心して暮らすための大切な感覚です。
加齢によって嗅覚は少しずつ衰えることがありますが、食事や生活環境を少し工夫することで、愛犬が快適に過ごせるようサポートすることができます。
また、嗅覚の変化の背景には病気が隠れていることもあります。
「最近、においへの反応が変わった気がする」
そんな小さな変化に気付いたときは、年齢のせいと決めつけず、愛犬の様子をよく観察し、必要に応じて動物病院へ相談してみましょう。
毎日何気なく見ている「鼻」だからこそ、その小さな変化に気付いてあげることが、愛犬の健康を守る第一歩になります。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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