2025.11.05 (老犬ケア)
施設訪問記 まるねこ
東京都大田区の静かな住宅街で出会った「まるねこ」を訪ね、代表の石丸さんにお話しをお伺いしました。
石丸さんは、一級建築士で愛玩動物看護師という異色の経歴を持つ方です。
建築士として長く設計に携わってきた石丸さんは、12年前に生後間もない白黒の兄妹猫を保護したことをきっかけに猫とともに暮らすようになり、その後も迷い猫との縁が続いて家族はあっという間に増えていきました。
猫と暮らす日々の中で「猫と人がお互い無理をせずに快適に暮らせる住まいがまだ足りない」と感じ、猫との住まいの設計に特化して取り組むようになり、猫賃貸の設計、リフォームや本の執筆、一般向け・専門職向けのセミナーへと活動の幅を広げてきたそうです。
猫シッターを始めてからは現場経験を重ね、国家資格である愛玩動物看護師にも合格・登録され、現在は動物病院の勤務もしています。
現在の拠点は、近所のご高齢の方が亡くなり取り残された4匹の猫を保護するために借りた一部屋から育ってきた場所で、設計とリフォーム施工の腕を生かして自ら手を入れ、猫が安心して過ごせる工夫を隅々に施しています。
保護の相談が続くなかでシェルターとしての役割が自然に形になり、昨年には老猫ホームと猫ホテルとして、一時預かりから長期の見守りまで受け止められる体制を整えました。
石丸さんは、認定NPO法人 人と動物の共生センターの東京支部長として「ペット後見」の仕組みにも携わり、飼い主に万が一のことが起きたときに猫の行き先と費用の備えを事前に決めておくサポートも行っています。
猫エイズのキャリア猫や、病気の猫ものびのび過ごせる専用スペースを隣室に新設する計画も進めています。
海外赴任や入院などで一時的に預かるケースから、親御さんの施設入居に伴う保護まで幅広く受け入れており、預かりをきっかけにご家族が体力や生活のリズムを取り戻し、再び猫と暮らせるようになった例もあったと教えてくれました。
石丸さんは「猫のために人が我慢を続けるより、少しの間預けて人の生活を整える時間があると、次の選択肢が見えてくることがあります」と静かに語ります。
日々のケアでは、動物病院と連携した猫のケアなど、愛玩動物看護師として対応できる範囲が広いこと、気難しい性格の子や人慣れしていない猫にも時間をかけて向き合えるチーム体制であることが強みだと言います。
アルバイトとして現場に入りたい人を受け入れ、将来の開業につながる実務経験を積めるようにしているのも印象的で、「受け皿が増えなければ困る猫は減らないから」と人材育成にも力を入れています。
老犬ケアをご覧のみなさまへのアドバイスを尋ねると、愛猫が年を重ねていくと、行動範囲が小さくなることを前提に、寝床・水・食事・トイレを無理なく猫が動ける範囲にまとめ、縁の低いトイレやフラットな犬用トイレ、ペットシーツなどを組み合わせて失敗を減らす工夫が役立つと教えてくれました。
若い頃に飛び乗っていた高所やキャットステップは、できなくなった瞬間が猫の自尊心を傷つけやすいからこそ、思い切って”上がらせない”配置に見直し、落下のリスクを減らすことが安心につながるとも話します。
もし介護や見守りに不安を覚えたら、少しの間だけ預ける選択や、家族と「もしも」の引き継ぎを早めに決めておく準備、必要であれば後見や遺言などの相談まで含めて、専門家の手を借りることをためらわないでほしいというメッセージも添えられました。
猫に特化した建築士がつくりあげた猫の習性に配慮した空間と、保護やケアの現場で培った実践が一つの場所に重なり、穏やかな空気に包まれた「まるねこ」には、猫と人が安心して寄り添える時間が静かに流れていました。
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