知っておきたい!愛犬の関節トラブルとサポートケア
2021.05.07 (老犬ケア)
年をとって関節の軟骨や結合組織が変化することで、関節の弾性が低下し、関節が損傷しやすくなります。関節が炎症を起こすと痛みで歩けなくなることもあるため、老犬の場合は特に注意が必要です。
そこで今回は主な関節疾患から関節トラブルを防ぐための暮らしの対策をご紹介します。
■ 代表的な関節トラブル3つ
【変形性関節症】
関節軟骨の損傷や変形を特徴とする「変形性関節症」は、動作に困難が生まれ、痛みも伴う慢性的な関節疾患です。中年期から高齢期にかけて発症しやすいと言われています。
<初期の症状>
・階段の上り下りが困難
・起き上がる動作が遅くなった
・足を引きずり始めた
・関節をかんだりなめたりする
・家の中でも横になっていることが多い
兆候に気づかず放っておくと、痛みが強くなり歩くのを嫌がるようになります。すると運動不足から体重が増え、ますます関節に負担がかかってしまう結果に。
愛犬の異変に気づいたら早めに動物病院に連れていきましょう。
【膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)】
膝にある膝蓋(しつがい)骨というお皿状の骨が正しい位置から外れる(脱臼する)状態をさす「膝蓋骨脱臼」。主な原因は膝関節や膝関節周囲にみられる先天的な形態の異常がほとんどですが、後天的な外傷などの外的要因も挙げられます。
膝蓋骨脱臼は無症状の状態から歩行が困難な状態まで幅が広く、程度のレベルは4段階に分けられています。
グレード1:普段の生活で脱臼を起こすのはまれで、無症状。
グレード2:膝を曲げると脱臼してしまうが元に戻ると普通に歩ける。
グレード3:膝蓋骨は脱臼したままの状態。指で押すと一時的に元の位置に戻るが腰をかがめ、内股で歩くようになる。骨の変形が明らか。
グレード4:膝蓋骨は常に脱臼している。指で押しても整復できません。骨の変形も重度となり、膝の関節を伸ばすことができない。
【椎間板ヘルニア】
骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が何らかの原因で逸脱し、脊椎を圧迫している状態をさす「椎間板ヘルニア」。ヘルニア部周囲の痛みに始まり、手足に麻痺が生じたり、場合によっては歩行が困難になったりすることもあります。
椎間板ヘルニアは遺伝的な要因はありますが、加齢も原因のひとつ。椎間板の外側の組織「線維輪」が変形して亀裂がはいり、そこから椎間板の内側の組織「髄核」が入り込んでしまいます。
髄核が入り込むことで線維輪が押し上げられ、その結果押し上げられた線維輪が脊椎を押し上げ椎間板ヘルニア(ハンセン1型)を発症します。
加齢により「線維輪」が変性して厚くなり、それが脊髄を圧迫するのがハンセン2型の椎間板ヘルニアで、老犬はこのタイプが多いとされています。
椎間板ヘルニアになると足に麻痺が生じることがあるため、足を擦るように歩くなどの歩行障害が見られたら要注意。そのほか、長時間の散歩を嫌がったり、ジャンプするなどの動作が突然見られなくなったりという兆候があれば、早めに動物病院を受診しましょう。
■ 生活に取り入れやすい!関節トラブルサポート
【すべりやすい住環境を見直そう】
フローリングなどのすべりやすい生活環境は、関節リスクが高まります。
硬くてクッション性が低いフローリング環境で過ごしたり、ソファからフローリングに飛び降りて遊んだりすることは関節への衝撃が強くなってしまいます。
関節トラブルを防ぐためにもカーペットや滑り止めにもなるフロアマットなどを活用するとよいでしょう。
【適度な運動と筋肉をつける】
関節周りを支える筋力が低下したり、硬くなったりすることで関節トラブルは起こりやすくなってしまいます。そのため運動をしっかり行うことで筋肉を動かし柔軟に保つとともに低下を防ぎましょう。
老犬の場合は「お座り」「伏せ」「待て」という姿勢を正しく保つ練習をすることだけでも体幹のバランスを保ち、筋肉を鍛えるトレーニングになります。
【関節に負担をかけない散歩コースを選ぶ】
舗装されたコンクリートの硬い地面は、関節に負担をかけやすくなります。そのためクッション性が高く、関節にやさしい「土」の上を遊びながら散歩するのがおすすめです。
芝生エリアを立ち入り禁止にしている公園もありますが、柔らかい芝生のある公園などもおすすめです。
◾️まとめ
人間同様、犬も年をとることで関節トラブルを抱えやすくなります。自分の足で歩いて、運動できることがまずは健康維持の基本となるため、老犬になっても筋力アップの運動を行い、健やかな暮らしをサポートしましょう。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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