夏は気をつけたい老犬の心臓病
2018.07.22 (老犬ケア)
暑さが厳しい季節は老犬の体調管理に苦労する飼い主も多いようです。
特に、心臓病などの持病をかかえている老犬にとっては特に暑さで熱中症にならないよう注意する必要があります。一方冷房による冷え過ぎも気をつけたいところです。
加齢によって機能が低下しやすい心臓ですが、代表的な症状の1つに僧帽弁閉鎖不全症があります。この病気は僧帽弁逆流とも呼ばれ、老齢の小型犬に多く見られる病気です。いろいろな犬種にみられますが、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チワワ、シーズー、ポメラニアン、マルチーズ、パピヨン、ヨークシャーテリア、ミニチュア・ダックスフンドに多くみられる傾向があります。犬の心臓病の中では約2/3を占めるといわれるほど発症率の高い病ですが、早い時は5~6歳から症状が現れることがあります。
僧帽弁閉鎖不全症の主な症状です。
・散歩中に座り込むことがある
・興奮すると咳がでる(進行すると安静時にも咳が出る)
・呼吸がうまくできず苦しそう
・食欲・元気がない
・突然倒れ込む(重度)
・呼吸困難(重度)
症状が気になった時の、お家でのチェック方法は以下があります。
・抱いた時、心臓の音がいつもと違うようなら要注意
・心拍数は小型犬なら80回以上、大型犬なら50回以上脈打つようなら要注意
(左胸の心臓の場所に指先を置いて、1分間の心拍数を数えます。15秒の回数×4でも構いません)
・呼吸数を数えてみる。異常があれば呼吸数は多くなります
(寝ている安静時に胸に手を当て、膨らむ回数を数えます。「吸って吐いて」を1回として、30回を超えるなら要注意)
僧帽弁は心臓の中で血液の逆流を防ぐ働きをする弁ですが、なんらかの原因で変性し、弁がしっかりと閉じなくなってしまうことが原因で症状が起きます。変性する理由は不明で、犬種の特異性もあることから、遺伝が1つの原因とも考えられています。
もう1つ、大型犬の老犬に多い症状は心筋症です。
心筋症は心臓の筋肉である心筋になんらかの障害が起こり、正常な心臓機能が損なわれた状態をいいます。肥大型・拘束型・拡張型に分類されていて、犬に多いのは拡張型です。
心筋症の主な症状です。
・乾いた咳をする
・疲れやすい
・元気がない
・食欲がない
・息苦しそう
・腹水がたまってお腹が膨らむ(重度)
・呼吸困難(重度)
・失神(重度)
心臓病は完治が困難で、機能を回復することも容易ではありません。早期発見で症状が軽いうちに治療を開始し、症状を悪化させないことが最善策になります。心臓への負担を軽くするため、暑さや寒さも上手にコントロールしながら、ストレスを最小限にすることも大切です。
老犬の様子をよく観察して重症化する前に受診すれば、投薬治療などでうっ血、不整脈を抑えて症状を緩和させ、体への負担も軽減することができます。
また、外科的手術を選択する場合もありますが、まだまだ一般的ではなく、老犬にとっては大きなリスクもあるので、年齢や進行具合、体調などを獣医師とよく相談し、家族全員で治療方針を話し合う必要があります。
少しでも体への負担がなく生活ができるよう、散歩の時間や室温と外気の寒暖差、冷房での冷やしすぎなど、生活環境にも注意を払って、過ごしやすい住環境を作るよう心がけてあげてください。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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