舌の動きや飲み込む力が落ちた子には、赤ちゃん用のやわらかいシリコンスプーンを使って口当たりを変え、食事はとろみや水分量を調整します。また、シニアになっても外の空気を感じられる時間を大切にし、歩けない日はカートでのお散歩や、ドッグランに出る時間を確保するとのことです。「私たちはもちろん、獣医さんも交え、お世話の方法を一緒に考える仲間が増えると、犬も人も楽になります」と齋藤さん。近隣の病院ともこまめに連携し、困ったときの駆け込み先を確保しています。
施設の空間は“暮らしの延長”を基本としています。
生活音のある一階で人の気配を感じながら過ごせるよう工夫し、季節の行事には百円ショップのベビー用品や小物を取り入れて、小さな撮影会のような時間も楽しみます。
「汚れや手間はつきものですが、“かわいい”を少し加えるだけで、介護はぐっと楽しく続けやすいものになります」と齋藤さん。
将来は、人手も少しずつ増やして受け入れの幅を広げたいという思いもあります。
「悩みを抱え込む前に、まず声をかけてください」
齋藤さんはそう繰り返します。
夜の徘徊に困ったら日光浴の時間を増やす、寝具やトイレの配置を変える、食具や食事形態を一段やわらかくするなど、できる工夫はたくさんあります。
カートで外の風を感じさせる、記録をつけて変化に気づくなど、どれも特別なことではないけれど、積み重ねることで犬の表情がほどけ、飼い主の肩の力もすっと抜けていきます。
「今のこの瞬間は一度きりです。できなくなったことを嘆くより、いっしょに新しい接し方を考えていきましょう」。
旅立ちのときまで、その子らしさをそばで支える温もりが、「Pumehana」という名前のとおり、部屋いっぱいに広がっていました。
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北海道函館市にある老犬介護ホーム「Pumehana(プメハナ)」を訪ね、オーナーの齋藤さんにお話を伺いました。