「施設訪問記 老犬介護ホームPumehana」。【老犬ケア】

2025.10.30

施設訪問記 老犬介護ホームPumehana

老犬介護ホームPumehana_看板北海道函館市にある老犬介護ホーム「Pumehana(プメハナ)」を訪ね、オーナーの齋藤さんにお話を伺いました。
ハワイの“思いやり”という言葉から名付けられた施設名の通り、小さな室内には南国の雑貨が並び、家の気配とやさしい空気が静かに流れています。
看板犬の「ナル」は東京の保護主さんから迎えた三歳の男の子で、人にはまだ少し不器用でも、犬や猫にはそっと寄り添ってくれる存在です。

齋藤さんが老犬介護に向き合うきっかけは、19歳から共に過ごした愛犬が17歳で介護期に入ったことでした。
徘徊や立ちすくみ、食べづらさなど目の前で起きる変化に戸惑い、動物病院の先生の指示を守るだけで精一杯だった日々を「もっとできたことがあったはず」と振り返ります。
その悔いを学びに変えようと通信講座で老犬介護を学び始め、次第に関連する資格や教材にも手を伸ばしました。
やがて保護犬のシニアに心が向き、ご主人の職場で外につながれていた雑種犬を迎え入れたことを皮切りに、手のかかるダックスの受け入れへと挑戦、函館の保護施設でボランティアを経て、2年前の10月に老犬介護ホームPumehanaを開きました。

施設は自宅併設のコンパクトなつくりで、ケージは安全のために使いつつも、基本は目の届く距離で、できるかぎりフリーで過ごしてもらう方針だそうです。
受け入れ時には、吠えやすさや視覚の弱さ、パニックの出やすさなど、犬ごとの特徴を汲み取って関わり方を整えることを大切にしています。
お預かり中は朝晩のLINE連絡で食事・排泄・散歩・投薬などの様子を写真や動画とともに共有し、宿泊時は体重や食事量、転倒や発作の有無まで記録した「健康シート」をお渡ししています。齋藤さん自身、記録によって“なんとなく食べた気がする”という曖昧さが解け、早めの受診や食事形態の見直しにつながることを何度も実感してきたそうです。

老犬介護ホームPumehana_施設内観

日々のケアでは、まず理由を探り、できることを少しずつ手伝う姿勢を貫きます。

舌の動きや飲み込む力が落ちた子には、赤ちゃん用のやわらかいシリコンスプーンを使って口当たりを変え、食事はとろみや水分量を調整します。また、シニアになっても外の空気を感じられる時間を大切にし、歩けない日はカートでのお散歩や、ドッグランに出る時間を確保するとのことです。「私たちはもちろん、獣医さんも交え、お世話の方法を一緒に考える仲間が増えると、犬も人も楽になります」と齋藤さん。近隣の病院ともこまめに連携し、困ったときの駆け込み先を確保しています。

施設の空間は“暮らしの延長”を基本としています。
生活音のある一階で人の気配を感じながら過ごせるよう工夫し、季節の行事には百円ショップのベビー用品や小物を取り入れて、小さな撮影会のような時間も楽しみます。
「汚れや手間はつきものですが、“かわいい”を少し加えるだけで、介護はぐっと楽しく続けやすいものになります」と齋藤さん。
将来は、人手も少しずつ増やして受け入れの幅を広げたいという思いもあります。

老犬介護ホームPumehana_ドッグラン

「悩みを抱え込む前に、まず声をかけてください」
齋藤さんはそう繰り返します。
夜の徘徊に困ったら日光浴の時間を増やす、寝具やトイレの配置を変える、食具や食事形態を一段やわらかくするなど、できる工夫はたくさんあります。
カートで外の風を感じさせる、記録をつけて変化に気づくなど、どれも特別なことではないけれど、積み重ねることで犬の表情がほどけ、飼い主の肩の力もすっと抜けていきます。
「今のこの瞬間は一度きりです。できなくなったことを嘆くより、いっしょに新しい接し方を考えていきましょう」。
旅立ちのときまで、その子らしさをそばで支える温もりが、「Pumehana」という名前のとおり、部屋いっぱいに広がっていました。

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