血液検査からわかること
2019.03.06 (老犬ケア)
老犬の体調不良や健康診断で行われる検査の1つに「血液検査」があります。血液検査には血液の成分を調べる2種類のスクリーニング検査があります。血液の中に含まれる細胞成分の数や質の異常を調べる「血球検査」と、成分を分析する「生化学検査」で、検査後に項目と数値をみながら、病気特有の変化が表れていないかを確認します。
検査の結果にはさまざまな項目があり、示された数値をみながら愛犬の健康状態を説明されることが多いと思います。なかなか見慣れない略号が使われているので、パッと見ただけではわかりにくいものですが、主な項目だけでも理解しておくと説明を受ける時に安心です。
■球数で示される「血球検査」
CBCとも呼ばれる血球検査で、主に白血球・赤血球・血小板などについて調べる検査です。
- 白血球数(WBC)
増加:感染症・炎症性疾患・白血病の疑い、ストレス・体の中に異物がある場合
減少:ウィルス性疾患・ビタミン欠乏・中毒など - 赤血球数(RBC)
増加:多血症・肺炎・脱水症状
減少:貧血 - 血色素量(HGB)
増加:多血症
減少:貧血 - ヘマトクリット値(HCT)
-上がると血液が濃いことになり、脱水症状などがみられます
増加:脱水・多血症・心疾患・肺疾患
減少:貧血 - 血小板数(PLT)
-止血機能を持つ血小板の数で、減少すると出血しやすくなります
増加:感染症
減少:血小板減少症
■成分分析から体の異常や病気の診断の目安とする「生化学検査」
生化学検査は問診や症状から疑われる主な病気を判定します。臓器ごとに検査項目も違ってくるため、老犬に多い検査項目を紹介します。
- 血漿蛋白(TP トータルプロテイン)
-栄養状態や腎機能・肝機能・免疫状態を把握できます
増加:下痢や嘔吐による脱水状態(高たんぱく血症)・ショック状態・腫瘍・感染症
減少:肝疾患・腎疾患・出血・腹水症・食事の摂取量不足 - アルブミン(ALB)
-肝臓で作られる血液中のたんぱく質量
増加:脱水
減少:飢餓・寄生虫感染・慢性肺疾患・ネフローゼ症候群・蛋白漏出性腸症 - アンモニア(NH3)
増加:肝疾患 - 血液尿素窒素(BUN)
-腎臓から排出される老廃物で、腎機能が正常に働いているか調べる
増加:腎不全・尿道閉塞・脱水・心不全
減少:蛋白欠乏症・肝不全 - クレアチニン(CREA)
-腎臓から排出される老廃物で、腎機能が正常に働いているか調べる
増加:腎障害・尿路閉塞 - 血糖値(GLU)
-血液中のブドウ糖(グルコース)濃度。太り過ぎると高くなる傾向
増加:糖尿病・慢性膵炎・副腎皮質機能亢進
減少:飢餓(低血糖)・すい臓がん・副腎皮質機能低下(甲状腺機能低下) - AST(GOT)
-肝細胞・心筋(心臓を収縮させる筋肉)・骨格筋に含まれる酵素
増加:肝障害・筋炎・心損傷・壊死・貧血 - ALT(GPT)
-主に肝細胞に存在する特異な酵素
増加:肝腫瘍・肝壊死・肝炎 - アルカリフォスファターゼ(ALKP)
-胆道系の細胞に多く含まれる
増加:肝障害・骨疾患・内分泌疾患 - ビルビリン(TBIL)
-黄疸指数で肝障害によって増加
増加:肝細胞障害・胆管閉塞・黄疸・溶血性貧血 - カルシウム(Ca)
増加:腫瘍・副甲状腺機能亢進症
減少:ビタミンD欠乏症・腎不全・副甲状腺機能低下症
■まとめ
検査項目には正常範囲があり、数値が大きく上回ったり、下回ったりした場合に病気が疑われます。また、治療中の場合は数値が改善したことで薬の効果や治療方法を決定する上で一つの目安となります。
また、病院にきていることでストレスを感じて、血液検査に影響が出る場合もあるので、検査結果については詳しく話を聞き、疑問点があれば説明を求めていきましょう。
数値結果によっては不安に感じることもあると思いますが、老犬の健康寿命を延ばすためには、定期的な検診も必要になり、血液検査をする機会も増えることから、小さな体調の変化を読み取れるよう、検査項目について理解を深めておきましょう。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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